セルフネグレクトとは?
孤独死の原因となる恐ろしい病
足の踏み場がないほどのゴミと臭いの中で亡くなった現場を見る度に、少しでも地域とつながっていれば、悲劇はもっと減るのにと、どうしようもない思いにかられます。現場から思うのは、人と人の”縁”がどんどん薄くなっていってるということです。
親子でもめったに連絡をとらない、近所とも付き合いがないから、隣人の異変に気づかない。悲しいことに、それが当たり前の社会になってしまっているのが現状です。
孤独死をしてから、ご遺族の方は大変後悔されることが多く、「なぜもっと連絡を取っていなかったのか」「もっとしてあげたいことがあったのに」しかし、後からではもうどうすることもできません。だからこそ、周りの人との付き合いを持たない、親族とも疎遠になってしまっている社会が孤独死・孤立死を生み出すことを知ってもらい、一人でも多くの人に「このままではいけない」と思ってもらうことが孤独死・孤立死の防止につながると考えております。
ですので、孤独死予防のシンポジウムやメディアへの出演の機会をいただいた時には積極的に参加し、私が日々の現場から見える人間関係の崩壊、「助け合い」という美しい日本人の文化が都会を中心に崩れている事など訴えています。今後さらに高齢化が進んでいく中で、高齢者と共存していく社会をひとりひとりが受け止め支えあう事が重要であることをもっともっと伝えていきたいと思います。

ゴミ屋敷との関係性
孤独死は65歳以上の高齢者の方に多く、全国区でみると毎年2万人以上の方が孤独死(孤立死)で亡くなっており、その実に8割以上が、このセルフ・ネグレクトが原因と言われています。セルフ・ネグレクトの方は精神的に不安定になり、生活が荒れて、部屋がゴミ屋敷化してしまうケースがとても多いのです。普通に生活を送っていればゴミは増え、ゴミを片付けなければゴミ屋敷になるのは当たり前のことです。
しかも、このような状態になってしまっているにもかかわらず、セルフ・ネグレクトの方の約4割の人が、頑なに第三者からの支援の受け入れを断っているのです。 誰かが注意をしたり、相談にのるなど手を差し延べれば、孤独死にまで至らないように思えますが、セルフネグレクトの方は、人間関係を断って社会から孤立してしまっている方が多く、ある意味この数字は必然といえるかもしれません。
なぜ?!自らの人生を放棄してしまうのか
セルフ・ネグレクトに陥りやすい状況や原因(きっかけ)としては、家族・友人・地域社会などからの孤立、家族や職を失ったことによる過去への執着心や孤独感によるもの、認知症、精神疾患、アルコールや薬物の依存、引きこもりからの移行、震災・災害などの影響、持病、離婚や離縁による生活環境の変化、経済的困窮など、様々な理由が挙げられます。
こう考えてみると特別なことではなく、誰もがセルフ・ネグレクトになる可能性があるのではないでしょうか。

セルフネグレクトの特徴
セルフネグレクトの方は自分の殻にこもり、心に壁を作ってしまい、プライドが高くなる傾向があるため、第三者が承諾なしに勝手に部屋を掃除などしてしまうと暴れたり、罵倒したりと、とても暴力的(攻撃的・挑発的)な性格になります。
そして空虚感や孤独感を紛らわせるためにアルコールに依存していくのも特徴です。カップめんと酒類の空き容器だけがどんどん増えていき、悪臭が漂い、やがて部屋はゴミ屋敷となります。 ハエが飛び回る不衛生な環境での食事で体に不調をきたし、常に下痢状態…そしてついには部屋で排泄をして、そのまま放置。こうなると、いつ孤独死してもおかしくないとても危険な状態です。

高齢者だけではありません!
近年は核家族化が進み、インターネットの普及の影響などもあり、対人関係が築けずに引きこもりがちになったりと、セルフ・ネグレクトの若年化の可能性が指摘されています。実際にメモリーズにご依頼いただく特殊清掃やゴミ屋敷清掃の案件でも、確実に若年者宅が増えてきています。そういった若者の多くは、自分がセルフネグレクトの症状があることに気付かずに、面倒臭いからといって部屋のゴミを放置するようになり、しだいに生活習慣や感覚が麻痺していきます。
やがては生活空間に悪臭がしたり、ゴミに埋もれながらでも平気で暮らせるようになり、他者の介入を拒否するようになっていきます。彼らの多くは20代の若者で、セルフ・ネグレクト予備軍の状態にあるといえるでしょう。

セルフネグレクトを
減らすことは出来るのか?
「孤独死」「セルフ・ネグレクト」そして「ゴミ屋敷問題」は、高齢化社会の日本において、大きな社会問題になっており、高齢者の生活支援サービスだけでなく、孤立する「セルフ・ネグレクト」を地域で支えるネットワークが重要であることは間違いありません。
最近では包括支援センターなどの介護支援者の方の活動により、約6割の人が支援を受け入れ、結果75%が改善、又は施設入居などにより終結しています。ただし、残りの4割は「放っておいてほしいと本人が拒み、支援がとても困難」という調査結果がでています。
セルフネグレクトは表面化せずに埋もれた事例も多く、実際に孤独死されてから現場の状況などからセルフ・ネグレクトだったのだと分る現場に何度となく立ち会ってきました。私たちはこれまでの経験を活かし、このセルフ・ネグレクトの問題を広く理解してもらうことで、減少につながればという思いから、現在も各地で講演会やセミナーを頻繁に行っています。
まとめと課題
今回はセルフ・ネグレクトについて解説しましたが、実際に遺品整理や特殊清掃、ゴミ屋敷清掃の現場を数多く経験した者の意見として自己放任の方を少しでも減らすには、セルフ・ネグレクトのことを理解し、生活環境の改善を支援するために第三者が介入できる仕組み作りをしていくことがとても重要だと考えます。それには支援者と支援を拒む人とのコミュニケーションのありかたを把握した上で、決して途中で見捨てることなく、根気よく対話を重ね、見守っていくことが大切です。

