発見は死後一ヶ月半、しかし…
寒い日の朝早くに、葬儀社様から連絡がありました。 「またご遺族様を助けてあげて欲しいのです! お兄様が亡くなってから一ヵ月半経って、昨夜発見されました!」 その声に緊張が走り、眠気も吹っ飛びました。 今月に入って孤独死の現場が4件目・・・。 1月にしては多いと思いました。死後1ヵ月半ともなれば冬場とはいえ、体は腐敗します。
ワンルームで亡くなられたので、強烈な臭いだろうと気合を入れました。 ワンルームでは角部屋じゃない限り、玄関を開けないと風が通りません。 ですので、ワンルームでの孤独死は臭いが充満するケースが多いのです。 私は、ご遺族様が部屋の中に入れないだろうと、布団袋や消臭機など 汚れた部分を撤去できるように、あらゆる現場に対応すべく、資材の準備に入りました。
現場で弟様と待ち合わせをしました。 弟様は突然の事で、悲しむ暇もないぐらい動揺されていました。 「兄の家なんて、来たことがないのです。」と私に打ち明けられました。 玄関の鍵を弟様が開ける時、「臭いが少ないな・・。」と思ったのです。 「どうぞ入って下さい。よろしくお願いします。」と弟様が手を出しました。 私は「おじゃまします。」と部屋の中へ入っていきました。 この時が、一番緊張する時です。
すると弟様も後ろから続いて入ってきました。 あまりにも死臭がしないので驚きました。 見積をしながら確認をします。 「部屋で発見されたと伺いましたが、どれくらい経っていたのですか?」 「1ヶ月半です・・。酷いことをしたものです。」 服などが散乱した部屋を見て弟様は唖然としていました。 しかし、全く臭いがありません。 何処で亡くなったかも全く分かりません。
通常であれば、腐敗した体液などが発見されるはずです。 「兄は餓死したんです。」 弟様がぽつりと呟きました。 でも不思議です。餓死の場合は死臭がしないのだろうかと・・・。 考えても仕方がないのですが、このようなケースは初めてでした。 特殊清掃がなくなり、思っていた金額よりも随分お安くできたので、 弟様も「助かりました。」と大変喜んでおられ。 探していた貴重品も見つかり、大変感謝して頂きました。