突然の孤独死の知らせに戸惑う兄弟

まだ30代なのに、不幸にもひとりの男性が孤独死されました。場所は大阪市内のマンションです。ご依頼主と現場近くで待ち合わせしていると、現れたのは30代と思しき男性が2人。「私たち田舎から出てきたばっかりで…突然、大阪の警察から連絡があって、訳が分からないんです」と、故人のお兄様が私に頭を下げます。隣には弟様、つまり今回亡くなられたのは、男3人兄弟の次男の方でした。「警察の方に、部屋の中はもの凄い臭いで汚れているから大変だよ」と言われたみたいで、かなり不安になっておられました。いつものように「大丈夫ですよ」と声をかけ、現場のマンションに向かいました。

部屋の前に立った時、ご兄弟2人は部屋に入るのを拒みました。異様な臭気が漂っていて、これ以上の臭いには耐えられないとの事でした…当然です。私が単独で部屋に入るとすぐに、台所に続く廊下で亡くなっていたのが分かりました。体液、血液、体中の脂が広い範囲で水溜りのようになっていて、そこに大小数百匹の蛆虫が動いています。そして何より臭いが凄く、今は臭いが一番強い時です。目が開かないぐらいの強烈な臭気が全身を襲います。この特殊清掃は、かなり大変だなと感じました。
警察の方から「通帳などが見つからなかったので、あると思いますよ」と 言われたそうで、必ず見つけて欲しいとの希望を承り、2DK全撤去、遺品整理と特殊清掃のすべてをご依頼して頂きました。

近隣からのクレームがでていたので、すぐに作業を開始。先ずは「異臭」の元である血液や体液、汚物の除去作業から始めます。血液や脂などをうまく除去するのは、経験から培うノウハウがあります。汚物や血液の清掃をしている時、色々な事が頭をよぎります。 「さぞかし無念だろうな」「本当は私でなく、遺族に遺品整理をして欲しかったかな？」「自分も一人になったら、こんな風になってしまうかも…」と。遺品をゴミのように事務的に破棄するだけの作業であれば、そこまで思わないかもしれませんが、私どもは遺品を細かく仕分けるので、亡くなられた方の人生の歩みを垣間見てしまうのです。故人様の心に触れて泣けるときもあれば、知らなくてもいいものを知ってしまった時もあります。

私はこの仕事をして「死」というものが身近に感じるようになりました。人間は突然死んだりすることがるという現実を受け止めています。おかげで最近は、親に連絡する頻度が増えました。周りの人に少し優しくなれましたし、いろんな意味で死への準備ができるようになりました。
話が逸れてしまいましたが、すべての作業は無事に終わり、管理会社とご兄弟様が最後に部屋の確認を行いましたが、あの臭いも痕跡も完全に消えていたことに、ものすごく感動してくれました。通帳や貴重品などもすべて発見し手渡せたので、私も一安心です。