精神疾患と自殺の因果関係
ある日「弟が自殺してしまったので、部屋の清掃をお願いします」と、ご遺族様より連絡がありました。現場はワンルームマンションで、発見が早かったのか、特に酷い状況ではありませんでした。
遺品を整理していると、机の引き出しの中から「病名:統合失調症」と書かれた1通の診断書と、医師から処方された大量の薬が出てきました。
統合失調症は、幻覚・幻聴・妄想といった症状が現れる精神疾患です。ある研究データによると、統合失調症患者の死亡原因の約10%が自殺によるものだそうです。日本の統合失調症の患者数はおよそ80万人程度といわれており、比較的頻度の高い病気であると考えられています。また、20~30歳代の若い世代に多いのも特徴です。
私は自殺された方や孤独死された方の部屋を数多く整理清掃してきましたが、統合失調症やセルフネグレクト、鬱病などの精神疾患に苦しんでおられた痕跡を現場でよくみます。 精神疾患には薬物治療やカウンセリングなどの療法が有効な手段とされていますが、一番頼りになるのはやはり身内の方のケアではないでしょうか。親や兄弟が日頃から相談相手になり、話や悩みなどを親身になって聞いていれば違う結果になったのではないでしょうか…。
今回の案件も、ご家族の方は近くにお住まいでした。自分ひとり生きていくのが大変な時代を嘆いてもしかたないですが、ご家族の方がこのような状況になるまで何も知らなかったとは思えないので、ただただ残念です。故人やご遺族の方の人生の背景まで知ることは難しいですが、誰かが支えになっていればと、このような特殊清掃の現場に立つ度に心が痛みます。