譲り受けたキーボード

ある日、遺品整理の見積りをしていると部屋にキーボードがあったので「音楽をされていたのですね？私も音楽するんですよ」と、見積に立ち会って下さった故人のご長男様に話し掛けると「ええ、趣味を見つけて喜んでました。仲間もできて練習に励んでいたみたいです」 「へぇ…私と一緒ですね。私もサックスをしていて仲間とライブするんですよ」「そうなんですか！是非聞きたいですね」と雑談は続き「どうされるんですか？このキーボード、買取りましょうか？」と尋ねると、音楽仲間の故人のご友人が引取られるとの事でした。遺品の形見分けをするのは良いことです。

そして１週間後の作業当日、現場にはあのキーボードがまだ残ったままでした。「あれ？取りに来られてないんですね」とご長男様に話すと「貰ってくれるはずだった友人の方も、3日前に亡くなったんです」とのこと。「ええっ！そうだったんですか…」「もしよかったら、使ってもらえませんか？」と言われ 「え…」と苦笑。なんか複雑な気持ちで返答に困ってると「横尾さんなら大事に使ってくれると思って…」「そりゃ、大事にしますけど…」と考えた結果「じゃあ買取らせてもらいますね」と個人的に購入させて頂くことにしました。家で弾くと何となくいい音がしたので、曲のアレンジなどで大切に使わせて頂いており、今も横にあります。