メモリーズ

12歳の少年が葬儀で母に送った言葉


今回は、大阪のとあるマンションの一室での遺品整理のお話。部屋はすごくきれいに片付けられています。ご依頼者様は故人の親戚の方で50歳ぐらいの女性でした。「この子が亡くなった○○の実の息子なんです」と、少年を紹介してくれました。「母の荷物の片付け、よろしくお願いします」と深々と頭を下げます。「礼儀正しいね!きれいにするから任してね!」としばらく会話をしました。お母様がどのように亡くなられたのか何気なくご親戚の方へ聞いてみると、驚きの話が返ってきました。

少年は一人っ子で、幼少時代は可愛がられて育てられ、すごく仲のよいご家族だったそうです。しかし、お父様の仕事がうまくいかずに、借金を抱え行方不明になられ、それから毎日のように借金取りが家に押し寄せ、数々の嫌がらせを受けたそうです。次第にお母様はノイローゼになり、この少年を道連れに2回ほど心中未遂を起こされたそうです。事情を見かねたご親戚の方(今回のご依頼者様)が、少年を施設に預けました…このままでは少年の命が危ないと察したからです。お母様の事も警察や、精神科などへ色々相談されたそうです。しかし、少年が施設に行ってからすぐに、お母様はかなりの鬱状態になってしまい お酒に溺れ、夜中に奇声を発し、警察の方が来る事もしばしばです。

そんなある日、それは起こってしまいました。少年の所にご親戚の方から知らせが入ります。「お母さんが港で自殺をしたらしい…」 少年はいずれこうなる事も想定していたのか、取り乱すことなく落ち着いた様子で「わかりました」と、静かに頷いたそうです。
お母様は夜の埠頭まで行き、自らの心臓を一突き…失血死で亡くなられたそうです。少年は警察の方に「色々ご迷惑をかけました」と丁寧に頭を下げたそうで、その落ち着きようが警察署内でも噂になったほどらしいです。

また、葬儀では迷惑をかけたくないからと、アルバイトで貯めたわずかなお金を差し出し「これで何とかお願いします」と懇願したそうです…12歳の少年がです。 最後の挨拶では「母はやっと落ち着いた所に行った気がします…私も安心しました」と、泣きながら見送られたそうで、その光景に葬儀のスタッフも涙したと聞きました。少年の気持ちには中々たどり着けないですが…遺品整理の作業が無事にすべて終わり、最後に遺品が積まれたトラックに「あとは、よろしくお願いします」と、頭を下げた少年の姿が頭から離れません…。

この記事を書いた人

横尾将臣

横尾 将臣
所属:メモリーズ株式会社 大阪本社
役職:代表取締役
資格:グリーフケアアドバイザー1級取得

遺品整理専門業者メモリーズ株式会社の創設者。創業から15年が経った今も、現場の最前線に立ち続けている生粋の遺品整理人。
遺品整理業界のパイオニアとして業界を牽引する一方で、若手育成にも尽力。それらの功績が認められ度々メディアなどに紹介されている。

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